2024.09.20
生前贈与は計画的に!相続財産を減らすコツと注意点
相続税のことを考えると気になってくるのが生前贈与ですよね。
相続は亡くなったあとにするものというイメージが先行しますが、実は生前贈与という手段もあります。
しかし生前贈与は、いくつかの重要な点に注意する必要があります。
生前贈与について聞いたことはあるものの詳しく知らない方に向けて、今回は生前贈与についてフォーカスしていきたいと思います。
生前贈与とは、生きている間に財産を他者(主に子や孫)に贈与することです。
これにより、相続時の財産を減らし、相続税を軽減する効果が期待できます。
生前贈与の魅力は、長期的な計画を立て、毎年の非課税枠を最大限に活用できること。
これにより大きな節税効果が見込めます。ただし、贈与者の生活に支障がない範囲で行うことが重要です。
相続税対策をするにあたり、生前贈与は有効的な手段であることは分かった上で、さらに生前贈与についてのメリットについてみていきましょう。
生前贈与における減税効果の累積は、長期的な相続税対策として非常に魅力的です。
これは毎年の贈与により、将来の相続財産を徐々に減らすことができ、相続税の負担を軽減できるからです。
毎年110万円までの贈与は非課税となります。
この基礎控除を毎年活用することで、長期間にわたって税金を抑えながら資産を移転できます。
子や孫など複数の受贈者に贈与することで、基礎控除の効果を最大化できます。
例えば、3人に毎年110万円ずつ贈与すれば、年間330万円の資産移転が可能です。
10年間継続して贈与を行えば、1人の受贈者に対して1,100万円、3人の受贈者に対しては3,300万円もの資産を非課税で移転できます。
また子や孫の生活資金や教育資金として活用できるので、家族の経済的支援にもなります。
将来的に価値が上昇する可能性のある資産を早期に贈与することで、評価額上昇による相続税増加を防げます。
また長期間にわたって贈与を行うことで、受贈者の状況に応じて柔軟に資産配分を調整できるのもメリットです。
生前贈与では、贈与者の意思を明確に示すことができます。
特定の人に特定の財産を渡したいという希望を実現できます。
また法定による相続順位にとらわれず、贈与者の意思に基づいて自由に財産を分配できるのも良い点です。
年間110万円の基礎控除を利用した計画的な贈与を行うとよいでしょう。
年間で定められているので計画的に贈与をするのがおすすめです。
相続時精算課税制度を活用し、2,500万円までの非課税枠を利用します。
生前贈与に多くのメリットがあることは理解できたところで、生前贈与を上手に活用する方法について紹介します。
毎年110万円までの贈与は非課税となるため、この基礎控除を最大限に活用し複数の受贈者に対して行うことで、より多くの資産を非課税で移転できます。
例えば現金、預貯金、有価証券、不動産など、経済的価値のあるものが対象となります。
さらに特例制度の利用も検討すると良いでしょう。住宅取得等資金の贈与や教育資金の一括贈与など、特定の目的に応じた非課税枠の大きい制度を活用しましょう。
将来的に価値が上がりそうな資産(土地や株式など)を早期に贈与することで、評価額上昇による相続税増加を防げます。
この制度を利用すると、贈与した財産は相続時に贈与時の価格で評価されます。つまり、贈与後に資産価値が上昇しても、相続税の計算には反映されません。
このようなメリットから生前贈与は、現時点での資産確定に大変有効です。
一方で2024年1月1日以降、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるため、より長期的な視点での計画が必要になりました。
生前贈与を含める税制は複雑で頻繁に変更されるため、税理士などの専門家に相談しながら計画を立てることをおすすめします。
生前贈与の非課税枠はどのような種類があるのでしょうか。それぞれの名称や控除内容について紹介します。
基礎控除として、毎年110万円までの贈与は非課税となります。
この基礎控除は受贈者ごとに適用です。
複数の子や孫に贈与することで、より多くの資産を非課税で移転できます。
また若い世代に早めに資産を移転することで、その資産を活用した経済活動を促進できます。
生前に財産を分配することで、相続時の遺産分割のトラブルを未然に防ぐメリットも見逃せません。
祖父母等の直系尊属から子や孫への教育資金の一括贈与を、1,500万円まで非課税にする制度です。
注意しなければならない点として使途が教育資金に限定されており、学校等以外への支払いは500万円が上限となります。
また2023年度改正では、受贈者の所得制限(前年の合計所得金額1,000万円以下)が設けられました。
2013年4月1日から2026年3月31日までに信託等された教育資金が対象です。当初の期限から何度か延長されており、2023年度の税制改正で2026年3月末まで延長されました。
受贈者:30歳未満の子や孫(前年の合計所得金額が1,000万円以下)
贈与者:直系尊属(祖父母、父母等)
直系尊属から子や孫への結婚・子育て資金の一括贈与について、1,000万円まで贈与税が非課税となります。
対象の使途として挙式費用や新居の家賃、引越し費用などが該当するほか、不妊治療費や出産費用、保育料にも使えます。
さらに医療費などの目的でも生前贈与できるのが大変魅力です。
しかし2023年の税制改正にて、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用できなくなりました。
さらに50歳到達時の残額に対する贈与税は一般税率で計算されることにも注意が必要です。
受贈者:18歳以上50歳未満の子や孫
贈与者:直系尊属(父母、祖父母など)
総額1,000万円まで
うち結婚資金は300万円が上限
父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住用住宅の取得・増改築等のための資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税となります。
現状は2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与が対象です。
注意点としては過去にこの制度を利用したことがある場合、非課税限度額が減額される可能性があります。
また配偶者や親族など特別の関係がある者からの住宅取得は対象外であることを覚えておきましょう。
省エネ等住宅の場合:1,000万円
それ以外の住宅の場合:500万円
・受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
・受贈者の前年の合計所得金額が2,000万円以下であること
・新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であること
・床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下
・受贈者が贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始すること
・断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上
・耐震等級2以上または免震建築物
・高齢者等配慮対策等級3以上
贈与税の配偶者控除は「おしどり贈与」とも呼ばれています。
これは婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を行う場合に適用される特例です。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を行う場合に適用される特例です。
夫婦間での資産移転が容易になるほか、将来の相続時の遺産分割のトラブルを防ぐ効果があります。
・贈与者と受贈者が婚姻期間20年以上の夫婦である
・贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭である
・受贈者が贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みである
注意点として、一生に一度しか使えない制度になります。
また相続時精算課税制度との併用はできないほか、2,000万円を超えた際は課税になるので注意しましょう。
一度限りの特例であるため、適用のタイミングを慎重に検討する必要があります。
また、不動産の評価額や将来の相続税への影響なども考慮しながら、専門家のアドバイスを受けて計画的に活用することが重要です。
特定障害者等に対する贈与税の非課税制度は、特定障害者の生活の安定を図ることを目的とした制度です。
特定障害者を受益者とする信託(特定障害者扶養信託契約)に財産を贈与した場合、一定額まで贈与税が非課税となります。
特別障害者:6,000万円まで
特別障害者以外の特定障害者(特定一般障害者):3,000万円まで
特別障害者:重度の知的障害者、精神障害者保健福祉手帳1級所持者、身体障害者手帳1級または2級所持者など
特定一般障害者:中軽度の知的障害者、精神障害者保健福祉手帳2級または3級所持者など
・受託者は信託銀行等の金融機関であること
・信託財産は金銭、有価証券、金銭債権等に限定
・特定障害者の生活費や医療費等に充てるため、定期的に金銭を交付すること
たとえば、毎年同額の贈与は定期贈与とみなされ、非課税枠が適用されない可能性があります。
贈与の時期や金額を変えることが重要になるなど、いくつか気をつけたいポイントがあるのも生前贈与です。
生前贈与を考えた際に考慮したいポイントについて紹介しましょう。
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる預金のことです。
名義預金は、贈与者と受贈者の間で贈与の合意がなく、受贈者が資金の存在を知らないか、自由に使用できない状態にあるため、贈与とは認められません。
しかも名義預金が発覚した場合、相続税や贈与税の追徴課税のリスクがあります。
名義預金を避けるためには、以下の点に注意が必要です。
(1)贈与契約書を作成する
(2)受贈者が口座を自由に使える状態にする
(3)通帳、印鑑、キャッシュカードを受贈者が管理する
(4)贈与の事実を受贈者に明確に伝える
生前贈与であっても、贈与者の死亡直前に行われた場合は相続税の対象となる可能性が高くなります。
現行制度では、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されます。
2024年1月1日以降、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されます。
つまり、死亡前7年以内の贈与は相続税の課税対象となります。
贈与者の死期が迫っていることを知りながら行った贈与は、「死因贈与」とみなされ、相続財産として扱われる可能性にも注意しましょう。
まず大前提として、基礎控除額(年間110万円)を超える贈与の場合は、適切に贈与税の申告を行う必要があります。
贈与された財産は受贈者自身が管理し、使用する必要があります。
また毎年同じ時期に同じ金額を贈与すると、定期贈与とみなされる可能性が高くなるでしょう。
贈与の時期や金額に変動をつけることで、このリスクを軽減できます。
生前贈与という形をとっていても贈与者が管理を続けると、贈与の実態がないとみなされる可能性があります。
遺留分とは、配偶者や子などの法定相続人に法的に保障される最低限の相続分です。
被相続人でもこの権利を侵害することはできません。
遺留分侵害が認められた場合、受贈者は遺留分侵害額に相当する金銭を支払う必要があります。
・遺留分を考慮した財産分配を行う
・すべての法定相続人から遺留分の請求権放棄の同意を得る
・贈与の時期や金額を慎重に計画する
贈与の意図や計画を家族間で共有し、理解を得ることで将来のトラブルを防ぐようにしましょう。
特定の人に偏った贈与を行うと、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、注意が必要です。
早めに贈与を始めることで、長期的な視点での資産管理や贈与計画が立てやすくなります。
贈与を早く始めることで、贈与税の基礎控除(年間110万円)を最大限に活用できます。
また教育資金や住宅取得資金の贈与に関する特例を利用することで、大きな金額を非課税で贈与することが可能です。
生前贈与を行う際は、自身の生活資金や将来の介護費用を考慮し、無理のない範囲で行うことが重要になります。
生前贈与は、税制改正を完全に回避することはできません。
しかし適切に活用すれば相続税対策として有効な手段となります。
改正内容を理解し、適切に対応することで、生前贈与の効果を最大限に活用できます。
ただし、2023年の税制改正により、その効果が一部制限されることになりました。
こうした税制改正は今後も起こりうるでしょうが、未来のことは予知できません。
このため早期から計画的に贈与を行い贈与の証拠を残すなど、細心の注意を払いながら実施することが大切になります。
また、税制は頻繁に変更されるため、最新の情報を常に確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
税制改正の主な変更点は以下になります。
2024年1月1日から、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されます。
これにより、亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に加算されることになります。
2024年1月1日から、相続時精算課税制度を利用した場合、年間110万円までは贈与税に加え相続税も非課税になります。
生前贈与は相続税対策として効果的な方法ですが、適切に行うためには税理士をはじめとした専門家のサポートが重要です。
生前贈与は複雑な制度のため、専門家のサポートを受けながら進めることで、より効果的な相続税対策が可能になるでしょう。
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