2024.10.14
事業の承継とは?基礎知識と魅力やリスクについても紹介
事業承継は、会社の経営を現在の経営者から後継者に引き継ぐプロセスを指します。
日本は後期高齢化社会ということもあり、この事業の承継に悩んでいる経営者の方がたくさんいるのをご存知でしょうか。
今回は事業承継の基本的なことからメリットやデメリットにもフォーカスしつつ、事業承継とは何かについて理解を深めていきたいと思います。
事業承継とは、会社の経営権、資産、知的資産などを含めて後継者に引き継ぐことを意味します。
会社の経営を次の世代へと継続させるための基礎を築くことを目的とします。
中小企業において、経営者の高齢化や後継者不在が深刻な問題となっており、事業承継は企業の安定と発展を図るための重要な課題です。
事業承継により、企業の技術や企業の伝統、従業員とその家族の生活を守り、未来に繋げることができます。
事業承継では、以下の3つの主要な要素が引き継がれます。
後継者として適切な人材を選び、経営権を譲ること。ここには、経営者の技術、ノウハウ、取引先や金融機関との関係なども含まれます。
株式、事業用不動産、設備、運転資金など、会社が所有する物的資産の引き継ぎ。
従業員のスキル、ノウハウ、特許・ブランド、顧客基盤、経営理念など、会社の競争力の源泉となる無形の資産の引き継ぎ。
これらの3つの要素を総合的に引き継ぐことで、事業の円滑な継続と発展が可能になります。
近頃多く聞くようになった事業承継について、どのような実態が関連しているのかをみてみましょう。
中小企業経営者の平均年齢は著しく上昇しています。
1978年に53歳だった平均年齢は、2010年には59歳、2020年には60〜74歳の範囲に広がっており、特に「70代以上」の経営者が増加していることは明らかです。
経営者年齢のピークは1995年に47歳だったが、2015年には66歳に上昇し、現在では70歳前後まで高齢化が進んでいます。
引用:中小企業庁「第1部 令和元年度(2019年度)の中小企業の動向」
後継者が見つからないことが大きな問題です。
帝国データバンクの調査によると、60歳以上の経営者においては、48.7%が後継者不在であることが報告されています。
中小企業の約57.2%が後継者が不在または未定であり、特に中規模法人の場合では後継者候補がいない事態に。
これを表すかのように「事業を継続させるためなら事業の譲渡・売却・統合(M&A)を行っても良い」と考えている割合が高いです。
引用:帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」
後継者がいる企業は、後継者がいない企業と比べて営業利益成長率や従業員数成長率が高い傾向があります。
後継者がいることで、企業のパフォーマンスが向上することが示されています。
事業承継実施企業は、承継後も売上高成長率や当期純利益成長率が同業種平均値を上回る傾向です。
このように事業承継は、企業の成長に好影響を与えることが確認されています。
事業承継には、主に以下の3つの主要な種類があります。
現経営者の子ども、兄弟姉妹、配偶者など、親族に事業を引き継ぐ方法です。
親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法です。
親族や社内に後継者候補がいない場合に、第三者(他社や個人)に事業を引き継ぐ方法です。
事業承継を行うと、以下のような多くのメリットが得られることがあります。
事業承継により、取引先との関係も維持できるメリットがあります。
特にM&Aでは、取引先との関係が継続されることで、地域の雇用や販路の維持、経済の衰退を防止もできるでしょう。
また事業承継型M&Aにより、経営者が負っている個人保証や担保が買い手企業へ引き継がれるため、経営者の精神的な負担が軽減されます。
M&Aによる事業承継では、株式や事業を売却することで、現経営者がまとまった利益を得ることができます。
これを元手に引退後の生活にゆとりをもたせたり、新たなビジネスにチャレンジすることもできるでしょう。
また買い手企業とのシナジー効果が期待できます。
買い手企業の強みを活かして、新たな市場の開拓や事業の拡大が可能になります。
事業承継によって、従業員の雇用を維持することができます。
特にM&Aによる事業承継では、譲り渡した先で事業が継続されるため、従業員が職を失うリスクを減らすことができます。
親族に適任者がいない場合、経営者としての能力が不足している人物に事業を引き継ぐことになるリスクがあります。
このほか事業承継を行う上で考慮したいデメリットをみていきましょう。
親族内や社内に適任の後継者がいない場合、外部から後継者を探す必要がありますが、適切な後継者を見つけるのが難しいことが多いです。
経営者としての資質と実務経験を兼ね備えた人物を探すには時間がかかるでしょう。
さらに後継者を育成するには、5年から10年程度の長い期間が必要とされます。
この期間中に、後継者が経営者としての知識と経験を習得する必要があります。
後継者候補には営業や財務、労務など複数の実務を経験してもらい、様々な経験や知識をつけてもらう必要があります。
いわゆる引き継ぎの時間が通常の職務よりかかり、その責任も大きなものとなるでしょう。
後継者が現経営者から株式を買い取る際、多額の資金が必要になります。
特に、親族外事業承継の場合、後継者が自社株を買い取るための資金を用意することが難しいことが多いです。
また親族内承継の場合、後継者は相続税や贈与税を負担する必要があります。これらの税金は大きな負担となり、後継者の財務状況に影響を与えることも否定できません。
中小企業の経営者が個人保証をしている場合、後継者もこれを引き継ぐ必要があります。
後継者がこの保証を負担することを嫌がる場合もあり、経営者の個人保証を解除するための対策が必要です。
後継者は、会社の負債も引き継ぐことになります。特に多額の負債を抱えた会社の場合、後継者にとって大きなリスクとなります。
また現経営者の個人保証が後継者に引き継がれることがあり、金融機関から個人保証を要求される可能性も否定できないです。
後継者が社内から選ばれた場合や、親族内承継の場合、取引先や従業員からの反発が生じる可能性もあるので早めに事業承継について考え始めましょう。
税理士が事業承継に関与する事業承継における役割について理解してみましょう。
税理士は、事業承継における税務面のサポートを提供します。
具体的には自社株の評価額の算定、相続税・贈与税の計算、節税方法の検討、事業承継税制の適用申請などを任せられるので安心です。
税理士がもっている税務面の専門知識を活かして、事業承継をサポートしてくれます。
これは、経営者と後継者双方の利益を最大化することができるでしょう。
税理士は、株式の譲渡価格の算定や株式承継に関する税務手続きを支援します。
事業承継税制の適用条件や手続きについて気軽に相談できるでしょう。
後継者が自社株を買い取るための資金調達方法についても税理士がサポートします。
資金調達のための財務計画や融資に関するアドバイスをもらえるのもよいでしょう。
税理士は、後継者教育や経営体制の整備にも関与します。
後継者が経営者としての責任を引き継ぐための準備についても適切に助言してもらえるでしょう。
事業承継は手続きが複雑で、多くの準備が必要です。できるだけ早めに準備を始めることが重要です。
一般的に、経営者が60歳になる前に準備を始めることが推奨されています。
必要な時にあわてないようにコツコツ準備することが大切です。
富士市の税理士法人和田会計は、事業承継、M&Aについて弊社の顧問先で何件か実績があります。
(※)現在はM&A仲介会社などと一緒に進めておりますが、時間と労力がかなりかかるため、顧問先のみの対応となります。ご了承ください。
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