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コラム
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フリーランス新法

会社設立

2024.11.17

フリーランス新法とは?わかりやすく制定背景や対象者について紹介します


 
日本でもフリーランスという働き方が、だいぶ浸透してきたように思えます。しかしフリーランスが増えることで、その取引にまつわるトラブルも増えてきています。

 

このことを受けて新しい法律が生まれました。その名も「フリーランス保護新法」です。

 

フリーランス新法は、フリーランスの労働環境を改善し、適正な取引を促進するために制定された新しい法律です。2024年11月1日から施行されました。

 

フリーランスとは?

フリーランスとは、特定の組織や団体に所属せずに、個人で仕事を請け負う働き方のことです。

 

フリーランスの職種は多岐にわたりますが、代表的なものには以下があります。

 

  • IT系:プログラマー、Webデザイナー
  • クリエイティブ系:ライター、カメラマン、イラストレーター
  • コンサルタント系:経営コンサルタント、キャリアカウンセラー

 

フリーランスは働き方を表す呼称であり、税務上の区分ではありません。

 

一方、個人事業主は税務署に開業届を提出し、税務上の区分として認められた個人事業者を指します。

 

多くのフリーランスは個人事業主として活動していますが、法人化しているフリーランスもいます(マイクロ法人とも呼びます)。

 

フリーランスは近年増加傾向にあり、多様な働き方の選択肢の一つとして注目されています。

 

ただし、安定した収入を得るためには高い専門性やスキル、営業力が求められます。

 

仕事を安定的に受注するのが難しいとされるフリーランス。

 

一方で法律的には雇用主と対等な立場です。

 

たとえば報酬の未払いの件についても「案件がなくなってしまうかもしれない」という不安感から強く言えないなどフリーランス側の立場の弱さが、これまで多く指摘されてきました。

 

これを解決するために、取り決めに透明性をもつこと、より具体化するべきという動きが強まっているのです。

 

フリーランス新法(フリーランス保護新法)とは?何が変わったの?

フリーランス新法の施行により、フリーランスの権利がより保護され、安定した労働環境が整備されることが期待されています。

 

発注事業者は法律の内容を理解し、適切な対応を取ることが求められるのです。

 

それでは新法で定められた義務や制限について今一度内容を確認してみましょう。

 

新法で定められた義務や制限について

以下のような義務や制限が追加されました。

 

契約内容の書面明示

業務内容、報酬額、支払期日などを書面で明示する必要があります。

 

報酬の支払い期限設定

給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払いが義務付けられます。

 

ハラスメント対策

ハラスメント防止のための体制整備が求められます。

 

募集情報の適切な表示

業務委託の募集時に正確な情報を提供する必要があります。

 

育児・介護への配慮

長期的な業務委託の場合、育児・介護と業務の両立に必要な配慮が求められます。

このような環境やフリーランスが安心して働けるような契約面での取り決めが多くなっています。

 

では実際にこの影響を受けて、どのようなことが禁止になったのかもチェックしてみましょう。

 

フリーランス新法で定められる禁止事項

 

  • 受領拒否
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき
  • 物品購入・役務利用の強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更・やり直し

 

下請法との違い

フリーランス新法は、下請法と比べて以下の点が異なります。混同しやすいので気をつけましょう。

 

適用範囲

資本金の制限なく全ての取引に適用されます。

保護対象

従業員を持たないフリーランスが対象です。

規制内容

取引上の規制に加え、就業環境の整備も含まれます。

 

下請法や独占禁止法では対応が難しかった事案に対して、より広範囲な保護を可能にすることを目指しています。

 

法人成り

フリーランス新法の目的とは?国の狙いについて

フリーランス新法の最大の目的は、これまで十分な法的保護がなかったフリーランスの労働環境を改善し、適切に保護することです。

 

フリーランスが安心して働ける環境を整備することを狙っています。

 

このような背景を受けて、契約内容の書面明示義務や報酬支払期限の設定などが今回はさらに明文化されているように思えます。

 

 

発注者とフリーランス間の取引を適正化し、不当な扱いを防止することが狙いなのです。

 

 

政府が推進する「働き方改革」の一環として、フリーランスという働き方を法的に認知し、多様な働き方を選択できる社会にするためにも、この法律はとても意義があるものです。

 

実際に日本のフリーランス人口は増え続けています。

 

近年増加しているフリーランス人口に対応し、その権利を保護する法的枠組みを整備することが狙いです。

 

フリーランスが安心して働ける環境を整備することで、さらに経済の活性化や新たな価値観をうむことにもつながります。

 

よりよい未来への第一歩とも言えるでしょう。

 

 

2024年11月1日より施行!

フリーランス新法は、正式名称があり『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律』としています。

 

2024年11月1日から施行されました。

 

 

資本金の大小に関わらず、すべての発注事業者が対象となるので、フリーランスと取引があるすべての企業が認識しなくてはならない法律です。

 

 

ただしBtoB取引のみが対象で、BtoC取引は対象外です。

 

フリーランス新法で変わる未来!発注事業者の義務について

では実際にどのような変更点があるのか、今回制定されたものを深く掘り下げてみましょう。

 

発注事業者は契約条件を書面で提供すること

発注事業者は、フリーランスに業務を委託する際に、取引条件を書面または電磁的方法で明確に示す必要があります。

 

取引条件を書面または電磁的方法で書面に記載すべきとありますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

 

主な項目は以下の通りです。

 

  • 業務委託事業者及び特定受託事業者(フリーランス)の商号、名称等
  • 業務委託をした日
  • 委託する業務内容
  • 給付・役務を受領する期日
  • 給付を受領する場所
  • 検査完了期日(検査がある場合)
  • 報酬額
  • 支払期日
  • 現金以外の支払方法を用いる場合の明示事項

 

このような取引条件は発注時に明示する必要がありますので気をつけましょう。

 

またフリーランスから書面の交付を求められた際は、速やかに対応する必要があります。

 

この義務に違反した場合、行政指導や勧告、さらには罰金などの罰則が科される可能性があります。

 

60日以内に報酬を支払うこと

フリーランス新法において、発注事業者には60日以内に報酬を支払う義務が課されています。この義務に関する主なポイントは以下の通りです。

 

支払期限の設定

発注事業者は、フリーランスから成果物を受け取った日から60日以内に報酬を支払わなければなりません。

 

また60日という期限は、できる限り短い期間内に設定することが求められています。

 

支払期限の起算日

支払期限の起算日は、フリーランスから給付(成果物等)を受け取った日、またはフリーランスが役務を提供した日です。

 

再委託の場合

発注事業者が他の事業者から受けた業務をフリーランスに再委託する場合、元請事業者からの支払日から30日以内に報酬を支払う必要があります。

 

支払期日が定められなかった場合

支払期日が定められなかった場合、給付を受領した日(役務を提供した日)が支払期日となります。

 

60日を超える支払期限の扱い

60日を超える支払期限が定められた場合でも、受領日から60日を経過する日が支払期日となります。

 

報酬の支払いは、検収の有無にかかわらず行わなければなりません。

 

たとえば発注した原稿を受け取った後に「やはりこれは公表できない」とし、かつその原稿料を支払わないのは違法になります。

 

このほかにも従来の支払慣行との違いに気をつけましょう。

 

「月末締め、翌々月15日払い」などの契約は、最大75日となるため、新法施行後となった今は違法となります。

 

募集情報は適切に

発注事業者は、フリーランスを募集する際に、正確かつ最新の情報を提供することが義務付けられています。

 

禁止される表示

  • 虚偽の内容
  • 誤解を招くような表示

 

表示すべき主な情報

  • 業務内容
  • 報酬に関する事項
  • 業務の遂行に必要な能力
  • 契約期間
  • 就業場所
  • その他の取引条件

 

募集時と実際の条件の相違

また募集時の条件から実際の取引条件を変更する場合は、当事者間の合意が必要です。

 

つまりフリーランスが正確な情報に基づいて仕事を選択できるようにすることです。

 

この義務は、従業員を使用している発注事業者に適用されます。

 

フリーランスの利益を損なう不当な扱いは禁止する

フリーランス新法では、発注事業者に対してフリーランスの利益を損なう不当な扱いを禁止する義務が課されています。

 

受領拒否

フリーランスに責任がないにもかかわらず、成果物などを受け取らないこと。

 

報酬の減額

フリーランスに責任がないにもかかわらず、発注時に合意した報酬を減額すること。

 

返品

フリーランスに責任がないにもかかわらず、成果物などを返品すること。

 

買いたたき

通常の相場よりも大幅に低い報酬額を不当に定めること。

 

購入・利用強制

正当な理由なしに自社の商品やサービスの利用などを強制すること。

 

不当な経済上の利益の提供要請

フリーランスに金銭などの利益を要求すること。

 

不当な給付内容の変更・やり直し

フリーランスに責任がないにもかかわらず、発注内容を変更したり、やり直しなどを要求したりすること。

 

これらの禁止事項は、主に1ヶ月以上の継続的な業務委託を行う発注事業者に適用されます。

 

この規定により、フリーランスが不当な扱いを受けることを防ぎ、公正な取引環境を整備することが目的です。

 

フリーランスの労働環境を整備する(妊娠出産への配慮をする)

フリーランス新法において、発注事業者はフリーランスの妊娠、出産、育児、介護に対して配慮を行う義務があります。

 

配慮の義務

発注事業者は、6か月以上の継続的な業務委託を行う場合、フリーランスからの申出に応じて、妊娠や出産、育児、介護と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければなりません(フリーランス新法第13条第1項)。

 

努力義務

6か月未満の業務委託の場合も、発注事業者は配慮するよう努めなければなりません(フリーランス新法第13条第2項)。

 

たとえばフリーランスが妊婦健診などのために打ち合わせの時間を調整したり、就業時間を短縮したりすることなどには、積極的に誠意をもって対応することが求められます。

 

たとえば妊娠でつわりがひどいのにも関わらず、出社を強制したりしてはいけないことになります。

 

 

破るとどうなるの?フリーランス新法の罰則

フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に違反した場合の罰則について、主な点は以下の通りです。

 

履行確保措置

公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣による助言、指導、報告徴収、立入検査が行われます。

 

罰金

命令違反や検査拒否などがあった場合、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

 

両罰規定

違反行為を行った従業員個人だけでなく、所属する企業(法人)も罰則の対象となります。

 

段階的な措置

違反があった場合、まず助言や指導が行われ、従わない場合は勧告、さらに従わない場合は命令へと段階的に措置が強化されます。

 

企業名の公表

勧告に従わず命令が出された場合、企業名が公表されることがあります。

 

信用・ブランドイメージの棄損

法律違反により、企業の信用やブランドイメージが大きく損なわれる可能性も否定できません。

 

公正取引委員会の調査

フリーランス側からの申し出により、公正取引委員会の調査に発展する可能性があります。

 

罰金の金額自体は比較的小さいものの、企業の信用やブランドイメージへの影響が大きいのがこのフリーランス新法。

 

そのためブランドイメージを壊さないためにも、企業全体でフリーランス新法を遵守する体制を整えることが重要です。

 

フリーランス新法を気に留めておこう

 

フリーランス新法は、フリーランスの就労環境を整備し、安定した労働環境を実現することが目的です。

 

 

この法律により、フリーランスと発注事業者の間の取引がより適正化され、フリーランスがより安心して働ける環境が整うことが期待されています。

 

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